一社目

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一社目

僕は緊張していた。狭く黴臭い、部屋とは呼べない様な三面をパテーションで仕切られただけのスペースで一人座っていた。 僕は六年前に作った学生服を着ていた。スーツを買う金は無かった。余り袖を通してない割りにはほつれが目立った。そして違和感も無く六年前の服を着れているという事には余り驚かなかった。 面接は初体験であった。僕は童貞なので初体験という言葉に興奮してしまう。興奮してはいけない、そう思えば思う程興奮は増してくる。 その時僕は何か異変に気付いた。熱くなった股間を見ると白く膨らみかけたブリーフの中央にバミューダトライアングルの如く何もかも吸い込んでみせると小さな隙間が空いていた。 いけねっ!僕は緊張のあまりズボンを履き忘れていた事に気付いた。ここ最近家の中から出て居ない。家の中ではいつもパンツ一丁で生活をしていてズボンを履く習慣が身に着いていなかった。 どうしよう?僕は焦った。焦れば焦る程、股間が膨んでいく。 そうだ!僕は野村沙知代の事を思った。そうすれば自と自制が利くかもしれない。暫く沙知代の事だけを考えた。 まもなく女性の係員が僕を呼びに来た。 「織田童夢さんですね。こちらに来てください。」その女性は僕のタイプであった。長澤まさみに少し似ていて気が強そうだ。直球ド真ん中。100点満点であった。しいて欠点を言うと僕より背が高い事だ。僕の身長は160㎝に満たない。余りにも美しかったので今晩のオカズにしようと考えてしまい、股間のオバケを覚ましてしまった。そのオバケは白くてQ太郎の様であった。 「こちらへ来てください!」 今度は先程より強い口調で言われた。焦っている僕は 「こちらを着てください」に聞こえ、なんて気の利く女性なんだ。困った僕に優しくズボンを貸してくれるなんて。と勝手に勘違いし勢い良く立ち上がった。 もう立ち上がっているQ太郎がその勢いによってお辞儀をした。「ありがとうございます」 僕の声はその湿った空間に響いた。そしてまさみは怪訝な顔で僕を見てこう言った。 「警察呼ぶよ」
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