三社目

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三社目

この前の面接は散々だった。警察が呼ばれ三日間の拘留。僕には悪気は無いのに一方的に執られた処置であった。 その後一社から通知があって面接に行った。僕としてはまずまずだと思った面接の日にちを間違えていた様で相手にされなかった。 今日は三社目の面接になる。村上商事という輸入雑貨を取扱っている会社だ。家を出る前に、そして面接会場に付いてからきちんとズボンを履いているか、日時は間違えて無いか確認をした。今日は完璧だ。僕はもう合格したつもりでいた。 広い控え室には僕一人しか居なかった。僕は広い空間に慣れていない。自宅も安アパートで六畳の部屋とダイニングキッチンがあるだけだ。その部屋に一家三人で暮らしている。 どうも慣れない状況に置かれると便意をもよおしてくる。まだ時間はある。僕はトイレで脱糞をした。 控え室に戻ってくると約束の時間の五分前であった。僕はそのまま椅子に座って待った。戻って来たら部屋の中が冷えた様に感じた。まだ春なのにエアコンでも点けたのだろうか?後方から若い男性が声を掛ける。 「織田さん、廊下を出て右奥の部屋に入って下さい。」 そう言うと僕が立ち上がる前に出て行ってしまった。部屋まで連れて行ってくれよと思いながら長い廊下を一人歩いた。 今日はいつもより腰が振られる。僕は自慢ではないが人より陰嚢が大きい。人の陰嚢をまじまじと見た事は無いが人より大きいのである。ただ大きいだけでは無い。重量感がある。だから普段から歩くと腰が振られるのだが今日はいつも以上に振られる。 陰嚢に比べ陰茎は非常に小さい。細くて短い。だから普段は陰嚢と一緒に振られる事など無いのだが今日は何故か一緒に揺れている。 腰が振られて自然とモンローウォークになる。脳裏に郷ひろみのモンローウォークが流れる。 長い廊下を歩き終えると一枚のドアが立っていた。僕はそれを三回叩いて中に入った。 中には面接官が三人居た。一人は40歳位だろうか。その他の二人は既に50代になって居る様であった。 三人は目を皿にして黙ったままだった。そのうち真ん中に座っている40歳位の男が深く沈んだ自身の意識を引き揚げる様に言葉を発した。 「個性的な格好ですね」
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