ある日、晴れのち雨

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さすがに寒くなってきたし、今日の寝床も探さないと行けなくなってきた。 昨日は駅のホームだったけど、駅員に追い出されたし。流石に連日はキツイ。 そうなるとどこ行けばいいか…… 財布には今硬貨しか入っていない。 金があった時はホテルとかにも泊まったり出来たんだがな。 傘もささずに、さ迷うように歩いていた。 と、不意に 「……あれっ?」 急に視界がぼやけてきてた。 上も下もよくわからず、視点がグラグラと定まらない。 何とか道端の塀に手をかけてみるが立っているのもつらい。 「……あっ」 ふっ、と全身から力が抜けていくのがわかった。 両膝が地面についている。硬くて冷たいコンクリートの感触がする。 体は言うことをきかないが頭だけは妙に冴えた。 辺りには人どころか車の一台も通っていない。 つまり、助けは呼べない。 塀に背中を預け、落ち着くのを待つ。 雨がやむ様子はない。 段々と瞼が重く感じてきて、このまま寝てしまいそうだ。 これはちょっとヤバいかな。 そう思っても徐々に視界が狭まってくる。 このまま少し休んでしまおうか。寝ればなんとかなるだろ。 ――ふと、雨が止んだ気がした。 そこで俺は瞼を閉じた。
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