ある日、晴れのち雨

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人混みの中を歩く。 さっきまでとは違い、こうして新しい視点から見るとまた色々なことが分かってくる。 まだまだ若く、スーツも不格好だが、希望が満ちている若者。 足が悪いのか傾きながらも杖使い歩いている年寄り。 母親が押すベビーカーの中でぐっすりと眠っている赤ん坊。 そんな人の流れに沿うように進む。 こんな日常の光景に溶け込んでみるが、周りからはどうみえるのだろうか? この中で俺は周りと同化出来ているだろうか? それとも1人だけ他とは違い、浮き足立ってるだろうか? 独りになっているのだろうか…… 「……バカか俺」 考えすぎだ。いつの間にか俺は立ち止まって自分の世界に行っていたみたいだ。人の波は俺を避けるように割れ、元に戻る。そのさいに軽く俺を見ていき、そしてまた無関心になる。 面白いもんだ。老若男女に関わらず、皆同じ様に過ぎていく。違った行動をとった者に一旦は観察するが、特に変わっていることがなければ気にはしなくなる。 「……ハハッ」 そんなどうでもいいことが可笑しかった。 そんな俺を見て不審がる周りの人。だが、声をかけたりはしてこない。誰だって無駄なことはしない、ただ、自分が周りと同じになるように行動する。 それが、普通。 だからこそ俺はそれに逆らってみたくなる。 向きを変え、1人逆に進んでいく。 周りに合わせる意味なんてない。 それが俺、直江 翼なんだ。
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