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「何、そんなうかない顔して」
医者らしからぬツートンカラーの髪の男、粕谷は長い白衣の裾を揺らした。
「誰のせいっすか」
余程怠いのであろう、腰を押さえたままフラフラと歩く玉木が不機嫌に答える。
「誰のせいって…俺?」
「あんた以外に誰かいるとでも?」
「いたらそいつぶっ殺してやる」
「いませんからご心配なく」
朝礼の為ナースステーションへと足を運ぶ途中だった。
「粕谷先生、」
医長である君島が声をかける。
「玉木、先行ってて」
玉木は小さく頷き、先にナースステーションへと向かった。
朝のナースステーション。
まだ時間的に早かったのか人は疎らである。
「おはようございます」
いつものように軽く挨拶し、自分の席へと腰を下ろせば、そこに山積みになった書類に小さく溜息を吐いた。
昨夜の行為のせいで痛む腰を片手で摩りながら書類を順調に片付けていく。
「あら、頑張ってんじゃん」
「っあ!」
軽く耳元に息を吹き掛けられれば、玉木は小さく声を漏らした。
そのようなことをする犯人は一人しかいない。
「粕谷先生…」
「ん?どした、顔真っ赤」
「どうしたもこうしたもないでしょ!?」
「ここで騒ぐな、話なら後でゆっくり聞いてやるから」
ポンと軽く頭を撫でられれば玉木は何も言えなくなる。
真っ赤な顔で、再び書類へと視線を移した。
「つか玉木、寝不足?凄いクマ」
「いい加減自分の仕事戻ったらどうすか」
「指導医が新人と一緒にいて何か問題でも?」
「仕事の邪魔です、目障りです、消えて下さい」
「へぇ、そんな口利くんだ。大好きな恋人に」
「夜寝かせてくれなかったり仕事中に変なちょっかいかける恋人はいりません」
「夜はあれだろ?お前がもっとってねだるからじゃん」
「はぁ!?あれはあんたがイかせてくんないからでしょ!?」
先程も言ったが、ここは朝のナースステーションである。
このような会話が許される場所ではない。
「大体、俺はMじゃないんですよ!なのにあんたが無茶苦茶すっからもう限界です!」
「ああ、ケツが?」
「ケツも体も全部っすよ!」
そんな時、背後から咳ばらいが聞こえた。
「仕事中に一体何の話かしら?」
「き、君島先生!」
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