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「こら太一!みちるが困ってるだろー」
太一の対面に座っている少女が声を上げる。ショートカットが似合うボーイッシュな彼女は大海原いつき(おおうなばらいつき)。大海原財閥の一人娘で生徒会副会長。学年は太一と同じく2年。
そして、いつきの傍へ歩を進める青年が一人。
「お待たせ致しました。本日の紅茶はアールグレイになります、冷めないうちにどうぞ」
短く切り揃えられた黒髪に銀縁眼鏡をかけた青年が運ぶマグカップからは淹れたての紅茶からの湯気が立ち、甘い香りとともに生徒会室に広がる。
青年の名前は氏家暁(うじいえさとる)、先程の氏家みちるの兄でこの生徒会の会長である。最上級生であるに関わらず未だ生徒会に所属している。
「申し訳ありません厳陸寺様。ちょうど昨日イギリスから良い紅茶を手に入れまして、お喜びいただけるかと思ったのですが…明日は和菓子に致しますね」
「いいよ暁兄ィ、太一のワガママなんだしさぁ」
「しかし、いつきお嬢様…」
「てか、言ったでしょ。この四人で居る時はそんな堅苦しい言葉使いも態度も要らないって!私たち幼馴染なんだよ!?」
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