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「いつきっ、お嬢様…!」
いつきは、足がとてつもなく早い。陸上選手顔負けである。そんな彼女は生徒会室から飛び出し、何処かへ走り去って行った。暁が追いかけたものの、既に廊下にいつきの姿は無かった。
「……」
無言で立ち尽くす暁。
「…みちる」
「は、はい。何でございましょうか、太一様」
「いつきを頼む」
「…かしこまりました」
みちるは一礼すると、小走りで生徒会室を後にした。
女性の姿が消えた生徒会室に漂う甘ったるい匂いは、男二人には不釣り合いだと太一は苦笑した。それ以上に、上手く噛み合わない執事とお嬢様にも、失礼だが苦笑は隠せない。
「…どうも上手くいきません」
「その様だな」
暁も、同じように苦笑を零した。
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