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「いつきちゃん」
「…みちる…」
見つかっちゃった。と笑ういつきの目は潤み、夕日に照らされたせいかは知らないが、頬は少しばかり赤くなっていた。泣いていたことは明白だが、みちるはうずくまるいつきの隣に座り、いつきの頭を撫でる。
それを合図に堰を切ったように大粒の涙がいつきの蒼い瞳から流れだした。わんわんと子供のように泣きじゃくるいつきの頭や背中を、みちるは落ち着くまで何度も何度も擦り、大丈夫よ、と鈴の音のような声で囁き続けた。
春先とは言っても屋上はまだ寒い。それでもみちるはいつきに寄り添いつづけ、そしてようやく落ち着いたころにいつきは絞り出したような声で喋り出した。
「…また、暁兄ィ怒らせちゃった…」
「また…?」
「うん…来てからずっと、あんな暁兄ィだから…みちるはこうやって前みたいに話してくれるのに…」
「……」
「私には他人行儀だし、なのに、他の子には昔の暁兄ィで接するし…私、嫌われちゃったのかなぁ…」
「いつきちゃん…あのね、お兄ちゃんはずっと、いつきちゃんの事を気にしてたんだよ」
「え…?」
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