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私はすっかり安心して、その辺の雑草を摘み、指でくるくる回したり、口にくわえて青臭さを味わったりした。
濃いピンクのホトケノザを見つけて蜜を吸ってみたり、小さなバッタを捕まえて手の内で跳ねる感触を面白がった。
自宅の周りも田舎だが、こんなに人の気配がしない土地には来たことがない。
あまりに気がゆるんでいたせいで、ごく近くで砂利を踏む音がした時には、心臓が飛び出る思いがした。
はっと振り向くと、ずんぐりとした体格の、いかにも農民らしい青年が、にこにことこちらを見ていた。細い目がより細くなって、いかにも朴訥な感じだ。
「こんちは。何しとるん?」
不審がっている感じはなく、好意的な尋ねかただ。
それでも私は夢から現実に引き戻された気分で、心に檻をした。
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