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「……ちょっと道に迷ってて」
ふーん、と青年は興味があるんだかないんだか分からない答えをして、にきびの浮いた頬を掻いた。
私は早く見知らぬ人から離れたい一心で、もごもごと「失礼します」というと、足を少し速めて歩き出した。
すると、ずんぐり青年も並んでついて来る。
道は一本しかないし、道に迷ったと言った手前、どこかでやり過ごすわけにもいかない。
青年をうかがうと、「自分は自分のペースで自分の目的地に向かって歩いています」という顔で、私と並んでいるのを気にした風もない。
だけど、私は気まずい。
すると、青年はふいに話しかけてきた。
「そういや、どこから来たん?」
「え?あ、あー、ぎふ……岐阜、です」
青年の口調は優しげだが、それでも動揺や不審がおさまらない。
どうにも吃ってしまった。
また青年は、ふーんと言うと黙る。
また気まずい。
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