4人が本棚に入れています
本棚に追加
もしかしたら、つながっている同じ川なのかもしれない、と思った。
方角は(おそらく)同じだし、赤い電車が走っていたことも記憶にある。
「あのー、ここって芥見と近かったりとか、しないですか?」
私が、かつて住んでいた土地の名を出すと、
「全然」
何を言ってるんだ?と言いたげな、呆気にとられたような答えが返ってきた。私は、間違えた恥ずかしさに怯んで、つい、会話を打ち切ってしまった。
「こっちやよ」
青年が、ひょい、と川を飛び越えた。
私は、青年がさっきの発言を忘れたふうなのに安堵した。
続いて跳ばねば。
でも、運動オンチの私には大変な難事だ。
踏み切る足はどっちだったか。助走は必要か。向こう岸は傾斜だけど大丈夫か。崩れやしないか。
考えるうちに、ただの小川が大変な谷川になってくる。
私がもじもじしていると、青年が手を差しのべた。
「大丈夫やで、つかまり」
最初のコメントを投稿しよう!