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雨の湿った空気が部屋を満たしている。
読みかけの文庫本から意識を離すと、いつの間にか空気が変化していた。
耳を澄ませば、ちゃんと雨音が聞こえた。そんなにひどくない。風もないようだ。
寝る前にちょっと本を読もうと、本棚に寄って物色していただけなのに、ずいぶん長い間読みふけっていたらしい。
「やっちまったな」
声に出してつぶやいてみる。
やたら周りが静かだった。
両親と同居しているが、起きている気配がない。
携帯電話で時間をみると、午前1時すぎ。なるほど。
私は文庫本の折れを直し、本棚へ収めた。
どうせ三度読みだから、読みかけでもかまわない。
貧乏性ゆえ、本は好きでも滅多に買わないのだ。
それでも20年生きていれば、それなりに本は溜まる。
さっきの文庫本は、並べた本の上に平積みになった。
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