4人が本棚に入れています
本棚に追加
廊下から光が漏れている。
妙に眠気がすっぱり断ち切られた頭を起こすと、扉から山吹色の光がちらちら差し込んで、部屋に青暗いグラデーションを造っていた。
外の具合からして、夜中過ぎ、まだ暗い明け方、そんな時刻だと思う。
いつもなら目覚まし時計が3つ鳴っても気づかないのに、なぜ、目が覚めたのか。
たぶん、階下の物音にある種のひそやかさがあったからだ。
幼い頃聴いてしまった、両親の、声を殺した夫婦喧嘩のような。
何か重要なことが、私に隠されて進行している時の、いやらしいひそやかさ。
こういう時、私は『眠って』いなければならないのだ。
次の朝、何も知らない顔をして「おはよう」と言わなければならない。
だが、今回はおかしい。
ひそひそ話をしているはずの両親のいびきが、隣室から聞こえる。
じゃあ、階下にいるのは?
ぞくり、とした。
最初のコメントを投稿しよう!