招くゆめ

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廊下から光が漏れている。 妙に眠気がすっぱり断ち切られた頭を起こすと、扉から山吹色の光がちらちら差し込んで、部屋に青暗いグラデーションを造っていた。 外の具合からして、夜中過ぎ、まだ暗い明け方、そんな時刻だと思う。 いつもなら目覚まし時計が3つ鳴っても気づかないのに、なぜ、目が覚めたのか。 たぶん、階下の物音にある種のひそやかさがあったからだ。 幼い頃聴いてしまった、両親の、声を殺した夫婦喧嘩のような。 何か重要なことが、私に隠されて進行している時の、いやらしいひそやかさ。 こういう時、私は『眠って』いなければならないのだ。 次の朝、何も知らない顔をして「おはよう」と言わなければならない。 だが、今回はおかしい。 ひそひそ話をしているはずの両親のいびきが、隣室から聞こえる。 じゃあ、階下にいるのは? ぞくり、とした。
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