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どのくらい経っただろうか。
ふっと気づくと、窓の外は見馴れぬ田園風景になっていた。
いつもなら、駅に着いた瞬間は目が覚めて駅名くらい確認できるのだが、今日は全く気づかなかった。
ヤバイ。遅刻だ。
ざっと心臓に血液が集まる。
車両内は誰もおらず、少し熱い日差しが注いでいるだけ。
読みかけの文庫本には、しっかり人差し指でしおりを入れているのが腹立たしい。
本の前に駅の心配しろよ。
「もー、やめてよね」
泣きが入った声で言うもむなしい。
私はマヌケな理由で単位を落とすのだろうか。
ごととん。
電車が減速してきた。
軽い衝撃と共に、小さな駅に止まる。
窓の外に目をやると、鉄筋とコンクリートの板で出来た、屋外用テーブルくらい簡素なプラットホームがあった。もちろん見覚えはない。
ともかく反対方向の電車に乗ろうと、私はバックを引っつかんで降りた。
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