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すっかり夕方になり、あたりは暗くなっていた。
「駅まででいいよ」
「危ないから送る」
本当は、もう少し側に居たかっただけ。もう少し、夏希の“彼氏”としていたかっただけ。
「…大丈夫だから」
…どうやら、夏希はここで別れたいらしい。
なら…俺のベタな演技もこれから始めなきゃ。
「分かった。気を付けて帰れよ?」
「うん」
うなずいて、夏希は俺に背を向けて歩き出した。
開始!
「―――!」
少し乱暴に夏希の腕を引き、自分のほうへ抱き寄せた。
ぎゅっ。
これが、最後のハグ。
その気持ちを惜しむように、力をさらに強めた。
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