こくはく

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「その、さ、だから…俺と付き合えば?」 「は??」 「だから、俺と」 「キモチワルイなっ、冗談は顔だけにしろ !」 「夏希っ!」 呼ばれたけど無視して、わたしはその場から逃げた。 付き合えば? そう言った、力斗の顔が頭のなかに写し出される。 これが、ただの冗談だったなら、普通に笑って、それでおわるのに。あれは、冗談なんかじゃなかった。ずっと一緒にいたからこそ分かる。長い間一緒にいたから、分かる。あれは、あれは。 あれは、…本気の顔だ。 「冗談よしてよ…」 無意識にこぼれた言葉。視界がうるんできたから、自転車を精一杯こいだ。 今日は、家に帰ってすぐに寝よう。何も考えずに寝よう。 制服から着替えもせずに、そのまま布団にもぐりこんだ。
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