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□ご褒美
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『行ってきます』
そう言って貴方は行ってしまった。
頬に小さな温もりを残して。
「灰音…起きてるかい?」
「…誰…」
突然人の声がする。
そんな状況にも、驚く気力なんか残ってなくて。
「僕だよ。コムイ。」
「コムイ…さん…?」
なんでコムイさんがここに…いつもなら誰か別の人をよこして指令室に呼ぶのに…
「…ねぇ。私、凄く嫌な子でしょう。」
そんな疑問などお構いなしに、ただ心に思った言葉だけを発してゆく。
「私、起きてたのに行ってらっしゃいも言わなかったんだよ。…凄く、冷たい子でしょう。」
「灰音…」
…そんなの、できなかった。
弱い私には、笑顔で貴方を見送ることなんて
「できなかった…言ってあげられなかった…っ!!」
何かの糸がプツンと切れたみたいに、私は泣いた。
子供みたいに声をあげて。
「…灰音、彼は、任務に行ったんだ。」
コムイさんはゆっくり私に近づくと、私のすぐ傍に腰掛けた。
「…僕らと、君の未来を守る為に。」
そう言って私の頭を撫でてくれたコムイさんの手は、とても優しかった。
「コムイさんの手…あったかいです。
…アレンの次に。」
そういうとコムイさんはプッと笑った。
それにつられて、私も思わず笑ってしまう。
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