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美琴が言うにはここ1ヶ月程前から怪しい‘気配’を感じていたらしい。
そう、半月程前までは‘気配’だけだった。
だが最近になってその‘気配’は大きな足音に変わり……
「黒い人影を見るようになったの……」
「どうして…俺達に言わなかった…!!!」
黎人の言葉からは、美琴に対する心配からだろうか、先程より強い怒りが見える。
僕にも、黎人の気持ちがよくわかった。
昔からの幼馴染だし、其れに……
「ごめん。変な心配を二人にかけたくなかったから……」
黎人は納得しきれていないようだ。
僕はここ最近、近所で起こっている事件を思い出した。
「……美琴。実はここ最近、この一帯で同じ様なストーカー被害に合う事件が多発しているんだ。」
「えっ?」
「気配がして、足音がして…そして……凄く言いづらいんだけど、その被害に合った皆は最終的に……」
僕は次の言葉が出なかった。
「何だよ……まさか?!」
流石に長年付き合っているだけに、
僕の言いたい事が何なのか二人にはわかったようだ。
「そう……殺されるんだ。」
重い沈黙が漂う。
「僕が知ってるのは此処まで何だけど……」
「犯人は?見つかってないのか?」
「僕も詳しくは聞かされてないんだ。何だか公に言えないみたいで……」
「はァ?!!それでもお前警察かよ!!!!?」
黎人は僕の胸倉を掴んできた。
黎人の反応も勿論だ。
警察官なのに、何も事件の事を知らない。
僕がこの事件を担当して、
何かを知っていれば、
彼女を少しでも安心させる事が出来るかもしれないのに……
「黎人!やめよう?智也知らないって言ってるんだし。」
美琴の言葉で黎人は手を離す。
「わ、わりぃ…」
「ううん、僕が不甲斐ないばっかりに……。」
「あの~、お客様?」
そこで店員が話しかけてきた。
「他のお客様のご迷惑になりますので静かにしてもらえないでしょうか?」
僕達は話に集中していたあまり、此処が喫茶店だということを忘れていた。
「す、すみません…」
「ここだと他のお客に迷惑がかかる…美琴、黎人、あの公園に戻ろう。今なら人少ないだろうし。」
「そうだね。」
「だな。」
僕達は喫茶店を後にした。
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