~親父~

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~親父~ 俺が産まれて間もない頃、まだ喋る等到底出来ない時 親父が会社の旅行から帰って来て 俺は「とうたん、とうたん」と喋ったらしい。 そんな赤ちゃん時のことなんか覚えちゃいねぇ。 でもそう言ったらしい。 その時、お土産に買って来たのは、「ねこバス」の玩具 玩具の裏に「こうすけ」って書いてあったから覚えてる。 それからか… 親父が俺を可愛がるようになったのは。 小さい頃から良くしてもらった。 幼稚園の時も小学校の時も中学も高校も、高校を卒業してからも…。 ソフトボールチームに入ってた頃は、キャッチボールに良く付き合わされた。 中学の部活の時は見守ってくれた。 高校の時は文化祭に来てくれた。 まぁ、その時は魚釣りが目当てか。 就職の時も 「遠くで力を試したい」ってわがままを叶えてくれた。 だから、千葉に行って東京で頑張ってる。 …「遠くで力を試したい」って気持ちはあったが、本音は 「親父と兄ちゃんの喧嘩が嫌だったから」ってのもあるんだ。 今思えば、あれはあれで家族の『絵』だったのかなって思う。 何かと厳しい親父だったけど、優しい親父でもあった。 親父がガンでヤバい時も 「俺は大丈夫だから、早く東京に帰れ」って言われた。 俺はそれを聞かないで、親父の見舞いに行った。 その時何も言わなかったけど…親父。 あんた嬉しかったんだろ? あんな形ではあったが、家族5人が揃った。 約2年ぶりの光景。 俺が帰る時はしっかり、手を握ってくれたのにな… 最後は俺を待っててくれないんだもんな… 待っててくれたんだろうけどさ。 それとも、俺にみっともない姿を見せたくなかったのか? それはそれで、親父らしいんだけどさ。
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