パジャマに口紅

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私は教授に頼まれて本をとりに家に帰った フランス文学ばかりだ 書斎には、教授、マスター、翔、私が一緒に撮った写真が沢山飾られてた さみしがりやな教授… この広い邸宅で一人何を思っていたんだろう 退院するまでに家の中はバリアフリーにしておかなきゃいけない 二階は私専用にして、教授は一階をのびのび使ってもらう 泣いちゃダメだ!私がこんなでどうする! 何度自分に言い聞かせても、家で自由にしてた教授が私の目の前を通り過ぎる 病室にもどると翔が遊びに来ていた 『翔いらっしゃい。仕事は?』 『今日は土曜日、休みだよ』 『土日休みなんだ』 『でもおとついなんて徹夜だぜ?結構厳しい世界』 『どこでもそうよ。文句言わない!チーズケーキ買ってきたから食べなさい。教授のおごりだよ』 『たまには甘いもの食べたくてね』と教授は笑った。私達は美味しそうにケーキを食べた その時私のフォークが一瞬止まった 大好きなチーズの香りが鼻をついたのだ 『どうしたの、明菜』と翔が顔を覗き込んだ 『実は…帰る前にカフェでマカロン食べたんだよね』と私は嘘をついた 『なんだよ~じゃあ俺食ってやるよ』 どうしたのかな。少し家で落ち込みすぎたのかな…それとも看病疲れ? 確かに今日は疲れていた
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