第三章 遺剣と協会と

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ようやく森を抜けられた。その先に見えたのは無限に広がる草原の海。そして遥か先を覆い隠している高みのある山々。   これまでの陰鬱とした場所とは逆転した所だ。   時折そよぐ草の音が耳を安らかにしてくれる。こんななかで飛翔するのはさぞ気持ちいいだろう。   今は人型なのでそんな目立つことはできないが。   「今日はずっとそれのまんま?」   「首都に近いし、多分規制も厳しいと思う。主に協会(クラスター)がね」   以前は田舎の町だったからなかったが、ここからは討伐協会(パニッシュクラスター)があると地図には書いてあった。用心して損はない。   「協会(クラスター)……あまり好きじゃないんだがな、あれは」   彼の表情が露骨に変わる。協会と私達は過去に因縁があり、特に彼はあまり好んでいない。   彼自身も協会に登録自体はしているが、金に無頓着の性だからか、活動は最低限に抑えている。   「よし、通れ」   町の正門に立つ駐在に許可をもらい、宿の予約を入れ次第私達は久々に別行動をとることにした。   私が人型で町に滞在する場合、特別な用事がない限りは個別で町を廻っている。彼と私との変な規則みたいなものだ。   彼は相棒だけど、常日頃一緒にいるのは何か違う気がする。   ある種の線引きかもしれない。  
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