第三章 遺剣と協会と

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知りたいのは彼の武器の事。謎だらけの大剣を調査してもらうためだ。   「なんじゃ?買い取りか?」   髪を短く刈り込んだ頑固そうな中年の男が店番をしている。多分店主だろう。   「いや、この剣を調べて欲しいんだけど」   「む?どれ……」   何か片目の眼鏡のような物をつけて注意深く彼の剣を見つめている。   彼が言うには義理の姉の遺品らしい。私も最初は仰々しい剣だと思った。透き通るような白銀色の剣身に朱色の太い線が重なって剣先まで何回かクロスしている。   まぁここまでは彩色として有り得るとしよう。だがどうしても違和感を拭えない部分がこの剣にはある。   「……線の中に文字が彫られているな。万国語ではない。異国語かなにかか?」   模様ではない。間近で見るとわかるがこの国の言語とは違う何かが延々と彫り連ねられている。   「今まで調べてきて羅国語、森国語ではない事はわかってんだけどね……。んなら材質はわかる?」   「……自然の無機物(アイノーマ)じゃねぇな。こいつは魔機物(マリーマ)でできてんぞ。兄ちゃんよ、これ再生したりはするか?」   「修理した事はない……かな」   魔機物であるなら魔生物との接触による腐食の心配はないが、それでも使う以上は耐久性は落ちる。だが彼の剣はそれすらない。   「……まさかと思ったが、間違いねぇ。魔機物のヴァンサーだ」  
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