第三章 遺剣と協会と

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ヴァンサー?おかしいな。魔機物はガーランとサリウスしか存在しないと思っていたんだが。   彼も眉をひそめて話を聞いている。   「兄ちゃんよ、古代生物(エルドクリーチャー)は知ってるか?」   「あぁ、多少なりとは。ドラゴンとかキマイラとかのことだろ?」   「そう。上級魔生物(ハイマリネオ)にはたまにそいつらの遺伝子を持つ奴らがいてな」   「…………」   彼はそれを知っている。実際に戦っている現場を私自身が目撃しているのだから。   「そいつらの骨から錬成して造り出したのがヴァンサーってんだ」   「おっさん、随分詳しいんだな」   「アルケミストを30年やってたらよ、知らない方が恥ってもんさ」   この人間は自分という存在に自信と誇りを持っている。   私はどうだろうか。そうやって自問するまでもない。曖昧で不透明な存在。これはまるで影だ。暗闇を歩む時は見えなくとも、何か明確な物に照らされると際立つ。   「……は?」   不意に自分の頬っぺたが指でつつかれる。こんな事を私にするのは彼しかいない。案の定彼は嬉々としている。   「ま~た暗い事考えてる?あ、もしかして俺がかまってあげてないから拗ねてるとか」   後半は冗談で言っているんだろうが、どうやらまた彼に気をつかわせてしまったようだ。   「……じゃあ甘えてもいいの?」   これでいいのかわからない。でも多分こんな感じだったような。   「は、あ……え?」   彼は予想外な反応に少し慌てている。ギャップというものに弱い事はこの一年半で学んだ。  
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