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「なんてね。でも、ありがと」
私は半分くらい人間じゃないからこの気持ちに自信は持てないけど、彼には感謝している。
彼に会わなければ今の私はなかった。
「んー……クロはクーデレに近いのかもしんないな」
クーデレ?またもや彼にしか理解できない謎の単語が出没してくる。
「まぁよ、お二方。ここは武器屋なんでな。ちちくり合いなら宿でやってくんな」
呆れた様子で店主は私達を見ている。痴話っぽくなったのはどことなく恥ずかしい。
「ほぅ、では行くと……」
「行くわけないでしょ。で、武器はまだ調べてもらう?」
彼が変にノってきたので直ぐさま修正を試みた。錬成された武器も魅力あるが、まだ私達には用事がある。
「いや、材質がわかっただけでも収穫だよ。おっさん、あんがと。いくら?」
「いらねぇよ。ヴァンサーをおがめたからそれで等価だ。大事にしろよ」
なんて太っ腹な店主だろう。以前鑑定してもらった所なんてろくな情報もくれずに金を取られたのに。
「おじさん、名前何て言うの?」
人間に対して固有名詞を知りたがるのは私には珍しい。自分でもそう思う。
「バロン=アルカーノ。界隈じゃあちったぁ名は知れてるぜ。覚えときな、嬢ちゃん」
「……」
アルカーノ。バロン=アルカーノ。何となく耳に残る響……
「う……ん?」
なんだろう?今一瞬ノイズが脳裏に走ったような。
でももうそれは消えている。人間のいる空間に居すぎたからか?
「お~い、クロ」
彼は店の出口に既にいる。待たせてはいけないと思い、気のせいにして彼を追った。
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