序章 彼と私の日常

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私の相棒は人間の部類ではかなり背が高い。   肩幅もあり、頑丈そうな体格をしている。   顔は……どうだろう?意志の強そうな黒い瞳に彫りの深い鼻。短髪がそれを余計に際立たせている、と言っても過言ではないと思う。   総じて彼は客観的に見れば男前な人間だろう。   ……客観的に見ればだけど。   「てかさ、前から思ってたんだけどクロって人間で例えるといくつ?」   近道だと言う森に入ってからおよそ30分。彼は横目に私を見ながらそんな疑問を投げ掛けてきた。   もう出会って1年半経つが、確かに彼にそれを言ったことはなかった気がする。   「確か10代後半だったような……」   「よし。じゃあ犯罪ではない」   この発言が何を意図しているか、私は経験上わかっていた。そしてこれこそが彼をおとしめている最大の要因。   「このド変態……」   「ヒッヒッヒ、褒め言葉だな。男はみな変態。これ常識」   顔に似合わない、気味の悪い笑い方をしながら彼は断言する。……されても困るけど。   「しかし勿体ない。クロの人型は可愛いのに」   「どうも」   「え~、そっけない……お?」   馬鹿話を余所に、彼は右手の何もない空間から大きな剣を取り出す。相変わらずというか何というか、鋭い感覚だ。   私にも伝わってくる。獰猛な獣の危険な匂いとやらが。  
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