第三章 遺剣と協会と

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「そう怖い顔をするでない。マネア・クロ」   「……マネアは余計。私はクロ。それだけで十分」   案外不思議ではないのかもしれない。討伐協会の副会長ともなれば魔生物の事にも詳しい。あの実験事故の事も色々と知っている可能性はある。   「タイラ、もう時間」   「ん、すまない。話し過ぎたか。ソウキチにクロ、今日は貴公らに会えてよかった。ではさらばだ」   白髪の少女がようやく口を開いたかと思えば、副会長達は私達に一言添えてから踵を返し、去って行く。   最終的にはあの少女の事について何も言及できなかった。   ただ、二人共着衣していたブラックスーツの胸元に銀色の対魔のバッチを付けていた。あれは協会の幹部にしか与えられない物だった気がする。   ……考えるだけでも謎が深まる。まさか魔生物が魔生物を殲滅する集団に加わっているとは。   「クロ、あの二人は?」   彼はいつになく真剣な表情をしている。直感で普通ではないとわかったのだろう。   「片方。白髪側が匂った」   「そっ……か。じゃあ俺の勘違いっぽい」   「それはどういうこと?」   「いや、俺は副会長の方が異質に見えたんでな。ま、あの変な被り物のせいかもね」   ちょうどその時、見計らったかのように受付のアナウンスから彼の名前が呼ばれる。ようやく終わったみたいだ。   今日は色んな人間と接触して私も疲れた。早く宿に戻って寝たい。   軽くついたため息は混雑した思考を僅かばかり放ってくれた。   整理はしていない。それはまた直面した時でいい。
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