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一際身体のでかい狼が二匹、素早く森の中から姿を現す。
体長3メートルくらいの、明らかに生態系を無視した下級魔生物(シリーマリネオ)だ。
私は一先ず戦いの邪魔にならないよう、高い木の枝の所へと避難した。
「ウゥウゥ……」
さほど馬鹿ではなさそうだ。向こうは飢餓を催した吠え声を上げながらも彼を待ち構えている。
だが、本当に賢明な生物ならここは逃げるべきであった。
「ホワイトウルフ……ぬるいな」
彼は一歩踏み出して間合いを広げ、大剣を真横に振る。
対してホワイトウルフはこれを跳び下がって回避はしたが、またもやこの時点で奴らは致命的なミスを犯している。
「よっと」
彼は避けられることを最初からわかっており、あえて逆足を前へと出してそのまま身体をひねり、遠心力を乗せて今度は大振りで斜めに斬る。
一刀両断……いや、一剣両断か。一撃でホワイトウルフは絶命を与えられた。
「高見の見物もいいけど、たまには一緒に戦わない?」
大剣を何もない所へ消し、見上げて私に聞いてくる。
「私は下級魔生物に興味ない。頼りにしてるよ、相棒さん」
「惚れた?」
「なわけない」
定位置である彼の肩に、そして彼は森の中を再び歩き始める。
私達の長い旅はまだ終わらない。
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