第ニ章 去り行く町

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この世で最も知能の高い生物は人間である。これは生命体の歴史を辿れば明白だろう。   ただ人間はどの生物よりも欲深く、底を知らない。   この国が打ち出した極秘計画は、そんな考えから生み出されたのかもしれない。   「クロ、着いたよ」   思考が現実に戻され、私は視界を前へ向けた。   規模は小さいが町としてはかろうじて成立している……そんな印象を残す。   ここがガラクタウンで間違いなさそうだ。   「旅の者か?」   町の入口付近に立っていた一人の男が彼に尋ねる。武装をしているのでこの男が駐在(ステイター)の人間なのだろう。   「あぁ、そうだけど」   男は私と彼を交互に見、訝しげな目を作っている。一応ただの鳥であるよう演技しているつもりだが、やはり多少目立つのは致し方ない。   「ふむ……まぁよかろう。宿はすぐそこだ」   「あんがと」   軽い挨拶を適当に済ませ、彼は足早に宿へと進む。   それにしても寂寥感のある町だ。こんなにも晴れているというのに、外には子供はおろか大人でさえ数える程しか見かけられない。   宿も一階が食堂となっているものの、閑古鳥でも鳴くような静けさを醸し出している。   入った時は視線が私達に集中したが、それも一瞬の事ですぐにそれぞれの方に向き直す。   他の旅人らしき者もそれなりにいる辺り、繁盛していないというわけではなさそうだ。   「ハァ……なんか息の詰まりそうな町だな」   最小限の会話で二階の適当な部屋を一室取り、そこのベッドに倒れ込んだ瞬間、彼は大きく息を吐きながら私と似た感想を述べた。  
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