第ニ章 去り行く町

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やがて彼は目をゆっくりと閉じ、小さな息を立てながら眠りにつく。   私を信用してくれていることが半分嬉しくて、もう半分どこか哀しい。   窓から外の景色を覗いてみても閑散としているのがよくわかる。町というよりは村と名乗ってもいいくらいだ。   あんな事件があったから警戒心を持っているのかもしれない。   「……おっと!?」   しばらくしてけたたましい警笛が町中に響き渡る。静かな場所なだけに余計に煩い。   彼も起きたみたいだ。   「んー……、魔生物(マリネオ)か?」   「そうだね。出る?」   「ほっとくと町が危険だろ?もちろん出撃!!」   生成した空間から剣を取り出し、彼は階段を素早く降りていく。私は窓から一階まで飛び、扉から出たところで再び彼の肩に着地した。   「入口の方か。クロ、どんくらいいる?」   「五、六体くらいかな。オーガタイプの奴」   かなりの巨体だ。上背も彼より高い。中級魔生物(ミドルマリネオ)のオーガニクスだろうか。   「よっしゃ、一丁やりますか」   私は肩から離れ、上空から入口に一番近い民家の屋根まで飛んだ。彼も速い。突進しながらオーガに接近する。   この距離だとすぐにわかる。やはりオーガニクスだった。体長三メートル程で額に一角を生やし、全身を赤に染めている。間違いない。   「ニンゲンクワセ……」   「言わせないって」   叩き込んできた昆棒をしなやかにかわし、懐からオーガの一体目の腕を斬り落とす。乱暴に回してきたもう片方の手が彼に迫るが、その直前に身体をひねって胴体と残りの腕もまとめて真っ二つにした。  
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