第ニ章 去り行く町

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滞在時間はせいぜい二時間。ろくに町中も回れずに再び森の中の歩道を歩く羽目になった。   ここらなしか、彼は元気がなさそうに見える。   「……お?」   私は何となく鳥型から人型へと姿を変えた。……そう、何となく。   「う~ん……サイドポニーの黒髪に黒い瞳、そして制服に黒ニーソ。やっぱしクロは可愛いな」   「どうも。肩に乗られたまんまなのも疲れるかと思って」   しかしこの衣服、彼が昔いたという学園の制服らしいのだが、何故女性用のを持っていたんだろうか。変態だからか?   彼の収納場所である自空間の中ははっきり言って謎だらけである。   「……ねぇ、何であの町で隠力を使ったの?」   過ぎた事を言っても始まらないが、彼の実力なら剣一本でも簡単に仕留められたと思う。   「あぁでもしなきゃ、オーガ達が分散して町を暴れ回るかなって。被害は最小限にしないと、な」   「ふーん」   私は元人間だが人間であった時の記憶はない。意識をもった瞬間からこの状態だった。   だからたまに人間の気持ちがわからないときがある。今もそうだ。彼にとっては無関係の人間達に気をつかっている。   「次の町までどんくらいかな……っと」   ポケットから地図を広げ、彼は距離を目測している。隠力で空間を操っているだけに空間把握能力は異様に高い。   「げっ、このままだとキャンプ確定か」   「いいんじゃない?たまには。最近宿ばっかだったから」   「じゃあこれは襲ってもいいフラグ?」   「調子に乗らない」   彼が元の明るい顔になってくれていてよかった。   言動と笑い方は相変わらず気持ち悪いけれど。
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