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鳥の声、鐘の音、眠りの中にまで響いてくる何か花火を打ち上げているかのような音、その音に混じって聞こえる聞き慣れた声。
「クロノ……」
「クロノ!」
「クロノったら!」
重いまぶたをゆっくり開けると、ベッドの前に見慣れた女性が立っていた。
「いつまでねてるの?いいかげん起きなさい!」
そう言い放ち、部屋のカーテンを開ける。
朝の日差しで薄暗かった部屋が一瞬で明るくなる。
差し込む日差しが眩しい。
「ああ、リーネの鐘があんなに気持ちよさそうに歌ってる」
女性の名はジナ。未だベッドにうずくまっている少年の母親にあたる。
ジナ「どうせゆうべ、こうふんして寝つけなかったんでしょ?ま、建国千年のお祭りだから無理ないけど……あんまり調子に乗ってハシャぎすぎるんじゃないわよ!」
ジナは階段の脇まで行ったところでこちらに振り向き、
ジナ「さ、いいかげん起きなさい!」
そう言うと一階へと降りていった。
そう、今日はガルディア王国建国千年を記念したお祭り、ガルディア千年祭がリーネ広場にて開かれる日。
ずっとこの日を楽しみにしていて、案の定、昨日の夜はほとんど眠れなかった。
重い体をゆっくりとベッドから起こす。
彼の名はクロノ。赤い髪に青い瞳をした少年だ。
ふと机の方を見ると一匹のネコがいた。
いつも餌やりをすっぽかされる可哀想なネコだ。
クロノの方を向き、ひと鳴きすると階段を降りていった。
着替えよう。
いつも愛用している白いハチマキをしめる。
着替えをしているとネコの餌皿が視界に入った。
ネコの餌0グラム。
これから出掛けるし、帰ってきてからでいいだろう。
そう考えながら部屋のカーテンを閉め、自分の部屋を後にした。
一階へ降りていくとジナが話しかけてきた。
ジナ「やっと起きたのね。そうそう、あの、おさななじみの発明好きな子……アラ、ドわすれしちゃったわ。なんていったっけ、あの子?」
発明好き…きっとルッカの事だろう。父親のタバンの影響か、一度発明に熱が入ると食事も休憩も取らずに没頭する幼なじみの子だ。
クロノがジナにルッカであると伝えると、
ジナ「そう、ルッカ!ルッカの発明、見に行くんでしょ?あんまり、おそくならないようにね。さ、行ってらっしゃい。」
そう言うとキッチンの方へ向かい、何かを思い出したように、
ジナ「あっ、そうそう。はい、おこづかい。お祭り楽しんでらっしゃい。」
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