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『何であなたはいつも私よりテストの点数がいいのよ!!』
小学二年の冬だった。
これは初めて奏が俺に向かって言い放った言葉だ。涙を瞳に溜めて、泣くのを必死に堪えながら。
『いや……そう言われても』
何とも言いようがないのは事実だ。実は微分積分も出来るんだなんて言った日には、プライドの高い彼女はもう学校に来ていなかったかもしれない。
『お前の勉強量が足りないんだろ。素直に負けを認めろよ』
久谷に関しては家が近い事もあってか、自然と話すようになっていた。子供の割りには妙に落ち着いており、接しやすかった事もあるのかもしれない。
『うるさいうるさいうるさいうるさい!!負けたら意味がないの!!』
彼女は毒のある言葉や高圧的な態度、そして何よりも負けず嫌いが巧を相したのか、友達らしき子達は見なかった。
というよりクラスから孤立していた。
『ひっく……うぅ………ひっく……』
言わずもがな、原因は僕なのだろう。彼女は確かに頭がキレる。それは全国の小学生の中でもトップクラスの実力だろう。だが僕が彼女の上に居続ける事で、例え彼女が全国模試で一位になろうが、クラス内での頭の良さは二位であり、それは一番上に君臨しておきたい彼女にとってのアイデンティティを失う事になるのだ。
『おい、ほっとこう。こんなん相手にしても無駄だよ』
『…………』
罪悪感が僕を包む。果たしてこれでいいのだろうか……。
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