モニカの幸せ

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止めようとしたモニカを、アーヴァントが手の動きで制した。 そのまま状況が飲み込めていないアルに説明を続ける。 「…モニカは奴隷だったのを、俺が保護した」 「え…!?」 アルの視線を、モニカは受け止めなかった。 ぐっと俯く。 『奴隷』だったという過去は、今もモニカを苦しめている。 「出身はわからない。 自分の名前も…彼女は忘れていた」 俺は気がついた。 アーヴァントは『モニカ』ではなく、『彼女』と言った。 「覚えていたのは両親との記憶。 その両親と最後に出かけたのが、サーカス」 「!」 「その帰り、彼女達は襲われた」 呆然とアルがモニカを見つめた。 ルシーに似た少女。 だけど、まさか。 でも。 「モニカ」 アーヴァントがモニカに優しく呼びかける。 モニカがその名を呼ばれた事に少なからず安堵し、顔をあげた。 だが。 「アルと一緒に、村へ帰れ」 「…え…?」 アーヴァントが短く告げる。 「君はチェルシーだ」  
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