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「…俺…なんか間違ってたかなぁ…」
あの後、シエルとモニカは一旦家に帰り、アルもまた仕事があると去って行った。
広い居間にいるのは俺とアーヴァントのみ。
そのアーヴァントが、ぽつりと呟いた。
「…帰る所があるなら、帰してあげなきゃと思ったんだ…」
ソファにもたれ掛かり、腕を目に押し当てているため、アーヴァントの表情は窺い知れない。
だが、そんな事をせずとも俺には彼の気持ちがわかるような気がした。
親として、長い間一緒に暮らしてきた。
アーヴァントは誰よりモニカの幸せを願っている。
だから。
「…でも…
モニカのあの顔を見たら、何も言えなくなったんだ…」
泣きそうな、すがりつくような目。
一体どうすれば、モニカは幸せになれるのか。
「…そうだな」
多分、アーヴァントも間違ってはいない。
元いた場所に帰るというのも、一つの方法だろう。
でも。
「それを決めるのはモニカだ。
…アーヴァントじゃない」
何が幸せかは、きっと本人にしか決められない。
「…そうだね…」
アーヴァントの呟きは、窓から入ってきた風によって掻き消された。
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