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俺が手を振りかぶって殴ろうとしたその時……!
「待ーった、待った」
場にそぐわない声に俺の手はとまった
「逆に言えば一人だけ死ねば良いんだろ?………簡単じゃねぇか」
俺は嫌な予感がしていた
おそらく、郁矢が言わんとしていることが分かっているからだろう
「俺が死ぬさ………まぁ気にするな、諸君よ」
郁矢はなんでも無いことのようにさらっと言う
でも、その手は震えていた
「なっ!?ふざけるなよお前……。そんなこと……!!」
「どっちみち誰かが死なないといけないんだぜ……!?そういうわけだから、俺が死んでもいいだろ?だから………気にするなよ」
「馬鹿野郎っ!!お前は……お前は生きたくないのかよ!?」
郁矢の目が本気なのは、気づいてる………けど
コイツには……友人だけには、こんなくだらないことで死んで欲しくない
「生きていてぇ!生きててぇよ!!ちゃんと生きて、お前らと一緒にいつもどうりに、話したい、笑い合っていたい、一緒にいたい!!!俺だって生きてたいんだ!!!!」
悲しそうに、腹のそこから郁矢が叫ぶ
そして、郁矢はうっすらと笑みを浮かべて………
「だけどな………もう駄目だぜ…?こんな世界じゃ………俺は笑えねえよ……。もしも生きのびられて、お前らと一緒にいても………笑えねぇ、ふざけられねぇよ……」
郁矢の頬に一筋の涙が流れる
「ふざけるなよ………!なんなんだよぉっ!?そんな勝手な理由は俺は……俺はぁっ!認めねぇよ!!」
目の前の景色が歪む
涙でぐにゃりと
拭っても拭っても…壊れた蛇口のように、涙が止まらなくて、溢れ出て来て……!
郁矢の顔を見たいのに……
少しでも、少しでも長く……顔をみていたいのに……!!
涙で………大切な友人の顔が…はっきりと見えない……!!
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