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インターホンを鳴らして応答を待つ。
『誰だ』
「あ、昨日連絡した一ノ瀬藍羅と他三名です。飛鳥さんは?」
藍羅が受け答えをする。
何でこいつはこういうときだけ敬語だったり、少し食い下がった言い方をするんだろうね。
『おー、君か。…そうだな、とりあえず中に入ってくれ。外じゃかわいそうだ』
「はーい」
プツリと会話が切れ、今度は玄関の戸が開いた。
「さぁこっちだ」
和服姿の背の高い男の人が俺たちを促す。
見た感じだとお兄さんみたいだけど、橘が『妹以外の兄弟姉妹はいない』って言ってたから、多分この人がお父さんなのだろう。
「俺が飛鳥の父の剛健だ」
純和風の家…というより屋敷の廊下を橘の父──剛健(ゴウケン)さんと歩く。
「私は一ノ瀬藍羅って言います。お電話をしたのは私です」
「ははは。そんなに堅くならないでくれ。こっちまで緊張してしまう」
剛健さんは腕を組ながら笑っていた。
「もっと普通にしてても構わんよ」
「ではお言葉に甘えて。よろしくね、剛健さんっ」
途端に藍羅はいつものように笑顔を振り撒いて剛健さんに手を出す。
剛健さんはその手を取り、ひとこと。
「あぁ、よろしく」
とだけ言った。
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