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「で、そこの坊主。お前の名前は?」
「俺は蒼井幸人です。よろしくお願いします」
「あぁ、よろしく」
そんな感じに、みんなお互いに自己紹介を終えて、再び歩き始めた。
行き先は道場の方。
どうやら橘はそこで稽古中らしい。
なんか悪いことしたな…。
「気にしなくていい。稽古といっても家の門下生の相手をするだけだからな。今日くらい休んだところで支障はないさ」
「そうですか」
「ところで健ちゃん。あーちゃんって実際どのくらい強いの?」
健ちゃんとは、この剛健さんのことである。
藍羅…お前のフレンドリーさには感心するよ。
「……まぁ、それは見てもらえばわかるよ。っと、着いたぞ」
そう話してる間にも、道場に着いたらしい。
剛健さんは道場の中に入っていく。
俺たちもそれに続いて中に入った。
「打ち込みが甘いわよっ! 次!」
『はいっ!!』
甲高い竹刀の音が響く。
「しっかり振り切りなさいっ! 私が女だからって手を抜くんじゃないのっ!!」
『すいません!』
橘は中心で防具を着けずに、数人の男の人──恐らく門下生の人たちだろう──と竹刀で打ち合っていた。
その凛とした姿に思わず俺は息を飲む。
俺たちは、橘の姿をただ呆然と眺めていただけだった。
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