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ガタンと激しい音がして、瞬間にまぶしい光と一緒にドアが開いた。
「紗弥加?」
父さんは、ドアをぶち壊した後、懐中電灯で部屋を照らしながら、私を抱きしめてくれた。
「っく、ヒック・・・。」
父さんの腕の中は、すごく落ち着けて、安心できて、思わず泣きじゃくってしまう。
反抗期のころから父さんに泣き顔を見せる事も抱きついたこともなかったのに、そんなことも忘れるくらい、ひたすらに泣いていた。
「もう大丈夫だからな、父さんと一緒に外に行こうな。母さんも待ってるから、ほら、立てるか?」
父さんは私を落ち着かせようと、頭を撫でながら肩を抱いて、階段を懐中電灯で照らしながら、私を先導してくれた。
玄関の鍵は見事に破られていたが、とりあえず外に出て、やっと私は何が起こったかを漠然と知った。
「紗弥加、無事だったのね。」
母さんが涙顔で私の姿を確認するようにうなずいた。
近所の人たちも外に出ている。
透の家からの帰りに見た景色と、まったく違った通りが見渡せる。
「とりあえずみんな無事だったな。」
父さんもうなずきながら、近所の人たちとこれからについて話だした。
私の身長よりもはるかに高かったはずの家並みが見事な程低く崩れ去って、見えないはずの、道路まで見渡せてしまう程、何もなくなっている。私が眠っている間に、天変地異が起こったんだ。
倒壊した家屋の匂いだろうか?
カビくさい。
カビの匂いに混じって、何かが焦げる匂いが鼻先をかすめた。
「お父さん、火事よっ。」
母さんも同じ匂いを察知して、父さんに知らせた。
「母さんは風呂場からバケツに水を汲んで来なさいっ!
紗弥加も手伝って。」
お父さんはテキパキと私たちに指示をしてくれた。
崩れかけた家にもう一度入り、私とお母さんは昨夜の溜められてままの浴槽から水をバケツにたっぷりと入れて、外で出る。
近所の人たちも同じようにそれぞれがバケツや、洗面器をもって消火活動をした。
まるで練習したことがあるかのように、バケツリレーをしながら、何度も何度も火事現場に水をぶっかける。
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