3残された不安

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「紗弥加、友則くんが来てくれてるわよっ」 台所からお母さんの大声で叫んだので、私は作業をほっぽりだして、下に降りた。 「よお、家族全員無事か?」 友則は私の顔を見るなり、少し日に焼けた肌から真っ白な歯をニッコリと見せて安心の笑顔を見せた。 「友則の所は?」 「うちも全員無事。」 Vサインを作りながら、久しぶりに会うのにそんな事を感じさせない人なつっこい友則。 「明良や、美奈の家は?」 「さぁ、オレの家もバタバタし ててさ、お前の家に来るの精一杯だったんだ」 友則の家からは私の家が仲間うちで一番近かった。 歩いて5分かかるかどうかってくらいの距離。 「そっか、私も落ち着いたら行ってみる」 私の意見に満足したのか、友則はうなずいた。 「そうだな、オレも心配だし、明日一緒に行かないか?今日はこれからばぁちゃんの家も見てこないといけないし、お前の家も避難所確保しなきゃいけないんだろ?」 そうね。 別に急ぐ必要もないだろうし、明日でいいか。 私の家族も、友則の家族も全員無事なくらいだし、みんな大丈夫だろう。 「たぶん、近所の高校に避難するから、家に居なかったらそっちを覗いてね。じゃあ」 友則と別れて家に戻ると、お母さんもお父さんもたくさんの荷物を持って、高校の体育館の一階にある食堂に避難する事になった。 畳3畳くらいのスペースを陣取って、どこから持ってきたのか、段ボールを敷き詰めた。 「夜は冷えるから、毛布を敷いて寝る方がいいな」 お父さんはそう言いながら、私のお気に入りのキティちゃんの毛布を段ボールの上に敷いた。 段ボールからはみ出して、床に毛布がこすれている。 「汚れちゃう・・・」 ボソリとつぶやいたのだけど、お母さんには聞こえていたらしく、人差し指を口にあてて「シーッ」のジェスチャーをした。 「後で、他の毛布に変えてあげるから」 お茶目にもウィンクなんかしながら言われてしまい、私は呆れながらも笑ってしまった。  そしてそのとき、私は地震以降初めて笑った事に気が付いた。 すると、わけもわらかずに涙が後から後から頬を伝う。
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