3残された不安

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まだ、どれだけの被害なのか、私は知らない。 だけど、避難所にいる人数は半端じゃない。 これだけの家が、倒壊したんだ・・・。 テレビもなにも見られなくて、もちろんお風呂に入るなんて贅沢もできなく、晩ご飯すらまともに食べられなかった。 お腹空いたよ・・・。 それに、凄く寒い。 電気だって、ガスだって開栓されてないから暖房なんてない。 1月、どれだけ厚着をしても、寒いモノは寒い!! 布団なんて家から持って来てないし、どうすれば寒さを凌げるのかしら? 向かい側に避難していた、近所に住んでいたのだろうおばあちゃんが泣いてる私を見ながら、曲がった腰をひきずるように私のそばまで歩いて来てニッコリと微笑んだ。 「もう大丈夫。戦争は終わったからのぅ」 それだけ言うと、家族の人だろう、おばさんに引っ張られるように元の場所までもどされていた。  何を言っているんだろうか? 戦争なんて、とっくの昔に終わったよ。 歴史になってるくらい、昔に。 ばっかじゃないの?? だけど、おばあちゃんのおかげで、私の涙は止まっていた。  避難所はだんだんと暗くなってきて、所々にロウソクの火が灯る。 私たち家族は海中電灯で明かりととりながら、家から持ち出したラジオで被害状況に耳を傾けた。 さっきからラジオは人の名前しか言っていない。 止まることなく、延々とこの震災で無くなった人の名前を放送していたのだ。  やっと、私にも被害の大きさが少しだけ理解できてきた。 この地区だけでなく、神戸全域を襲った地震。 どれだけたくさんの犠牲者がいるのだろうか? 倒壊した家の数は? でも、そんなことよりもラジオから流れる名前に、知り合いの名前が放送されないことを祈った。
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