3残された不安

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2時間ほど、あんまり会話もないまま、ただラジオを聞いていたら、食堂の入り口から大声が響いた。 「救援物資のおにぎりが届いたぞ!! 一人一つづつだから、それ以上は取らないで下さい」 お母さんは急いで入り口の人だかりまで行き、家族3人分のおにぎりを手にした。  朝からバタバタしていたにもかかわらず、崩れかけの家で買い置きしてあったパンやお菓子を食べて私はまだマシで、中には全壊や全焼した人のほとんどが朝から今まで何も口にしていなかった。 みんながありがたがって、配られたった一つのおにぎりを食べてる中、奥の方から小さい子供の声が私に聞こえた。 「誰が作ったかわからないモノなんて、食べられなぁい」 確かに、コンビニで売られてるようなおにぎりじゃなく、人間が手で握ったおにぎり。 だけど、この一つを届けるのに、どれだけの時間がかかったのだろう? それに、マシだと言っても空腹な私はイライラしていたのかもしれない。 じゃあ食うなっ!! そう怒鳴ってやろうと、声をする方向に視線を向けると、まだ小学校低学年くらいの女の子だった。 「わがまま言ってたら、死んじゃうよ。早く食べなさい。これが最後のご飯かもしれないのよ」 母親だろう人が、子供をしかりながら、半ば無理矢理にその女の子に口におにぎりをつっこんでいる。  コレが最後のご飯かもしれない・・・。 その言葉は、とてもリアルに私の心に残った。 私はここで死ぬのだろうか? 高校の食堂は、すごく広い。 だけど、その広い食堂の天上を支えている太い柱の数本に、いくつもの亀裂がある。 半径500センチはあるだろ太さの柱ですら、こんな状態。 この次に大きな地震が来れば、ココすら倒壊しちゃうかもしれない。 さっき放送されていたラジオのように、私の名前を誰かが聞くのだろうか? 下手したら、知り合いですら聞きもらしてしまうかもしれないように、淡々と流れる人名の一つ。 そんなのヤだ。 もし、この食堂が倒壊してしまえば、死体の判別もつかなくて、誰が誰だかわからないかもしれない・・・。 朝から鳴りやまない救急車と消防車にパトカーのサイレンが、余計に私の不安をかき立てた。 地震が起こったのは明け方だったのに、今だにサイレンが鳴りやまない。
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