2 残された弟

3/7
前へ
/62ページ
次へ
ま、一応紗弥加の足下は、ルーズソックスになっている。 「とりあえず明良、何か着ないと風邪ひくぞ。」 兄貴に言われる通り、マジで寒くなってきた。 スウェットに着替えていると、紗弥加のポケベルが軽快なリズムを奏でた。 「誰?」 静香は、紗弥加の手元を覗き込みながら聞いている。 「ああ、クラスの男子。来週、修学旅行でしょ?だから打ち上げならぬ、打ち入り飲み会しよって話なの。」 「へぇ、紗弥加のクラスって仲いいもんね。」 最初は仲間内しか知らなかったベル番も、次第にそれぞれの世界が変わるように普及率が違っていた。 クラスの男って、わざわざ男に教えなくてもいいじゃねぇか。 「静香のクラスは飲み会とか、ないのか?」 兄貴も、オレと同じように心配してるのだろうか? 静香に話題を振った。 「さぁ、あんまり興味ないから知らない。」 その答えに、兄貴は大きなため息をついた。 安心したからなのかな? いいよな、彼女が一途で。 静香なんて中学のころから兄貴が好きで、やっと卒業のときに告白して、恋人になれたんだよな。 オレなんて、小学校から一緒にいるのに、全然相手になれてないんだぜ。 「静香は健さん命!だもんね。学校の男なんて目に入らないってか?」 紗弥加はオレの気持ちなんて、ちっとも気づかずに、ケラケラと笑いながら楽しそうにしている。 「じゃあ、お前は学校の男に興味あるのか? でも、かわいそうに・・・そんなヤンキー丸出し女なんて相手にしようって物好きはいないだろうけど。」 ああ、言わなきゃいいのに、つい憎まれ口を叩いてしまう。 「残念でしたぁ。学校の男なんて狙ってないもん!私は断然男子校の男がいいの♪ アイツら女に飢えてる分だけ、すっごい女を大切に扱ってくれるから気持ちいいんだよね。 間違っても明良みたいな意地悪言う男なんていないもんね、だいたい明良には私の魅力は高尚過ぎてわからないのよっ、フンッッ!!」 予想通りというか、やっぱりというか、紗弥加はどでかい『フン』をオレにくれた。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加