偶然

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暗い部屋に置いた几帳などの調度品の向こう側に黒い影。 「ひっ」 影が振り向く。 つい上げてしまった声は不幸にも影に届いてしまったようだ。 「姫か?」 低い男の声が響く。 これはもしかすると、噂に聞く盗賊とやらなのだろうか? 「姫、恐がらないでほしい。姫には危害を加えるつもりはないから。」 得体の知れないものに対する恐怖から、身がこわばって動けない。 優しい声だからといって、気を許してはいけない。 「な、なんのつもりですか?ここには何もありません。」 ここに金目のものがないのは本当だ。華美なものはあまり好きではないから。 「ここには私の大切な物があります。しかし無理やり奪うつもりはありませんから、今日は退散しますね。」 そういいながら、男の声はどんどん遠ざかっていく。「それでは姫。また会いましょう?」 そう言うと影の気配は消えた。
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