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目の前にある棚の上には、あの気色悪い男の娘が死人のように横たわっている。「どうか、助かりますよう」
貴族のその男の祈り続けるぶつぶつという声が聞こえる。
どうせいいところに嫁がせて、後ろだてを得るか地位を上げる為に生き返らせるのだろうに。
「人のなかでも最悪ね。」呟いてみるが、やらない訳にはいかない。やらなければ今までより家の者に恨みがむくだろう。
「千姫、頼むぞ」
父の声が聞こえる。いつもこうだ。世界が遠くなったように感じる。
まるで、自分は周りにいる人々とは違うのだと言われているように。そして胸の内から『言葉』が聞こえる。いつもなんと言っているのかは分からない。しかしそれが聞こえて来ると勝手に身体が動く。唄を謳い、舞を舞う。いつものように。だけど、いつもとは少し違うように。声が命じる。
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