58人が本棚に入れています
本棚に追加
はたと、自分の将軍の顔を見た。
人間の少ないこの軍の中、やはり人間ではない将軍様は、私の顔を見て一言。
「Welcome back」
と告げた。
ただいま、と気軽に告げれる中ではないため、軽い会釈で返す。
将軍は、自分の指揮する戦場を再び見つめなおした。
単純に、最初見た時はカッコイいと思った。
何時も笑っていて、仮面の下に何かを隠している。
そんなイメージだった。
今でも戦っている時はそうだと思うし、有利な時のみに出てくる笑みは一層魅力的。
他軍からも何気なく人気があるらしい。
しかし、仮面将軍アルケインにはワインという価値観がどうにも抜けないらしく、負けると必ず
「あんな大地に葡萄は育ちませんよ…」
と口を尖らせる。
違うだろ、このワイン馬鹿。という言葉がポロリと出そうになる。
カッコイい将軍様から、一気に仮面ワイン将軍アルケインになってしまう。
あれさえ無ければなぁ、とも思うが、あれがあるからワインの献上のしがいがあると言うべきか。
今日も持ち帰ったワインを氷の入ったバケツに突っ込んで献上の準備をする。
コンコンッ
「アルケイン様、よろしいですか?」
「入りたまえ」
優雅な声が聞こえる。
「失礼します」
扉を開くと、ワイングラスを傾けて微笑む姿のアルケイン様
「何のようだ?」
アルケイン様は私のワインにはまだ気がついていないようだ。
「先程ワインを手に入れたので、アルケイン様にとお持ちしました。」
ピクッとアルケイン様の手が止まる。
「本日は千年伯爵にございます。」
「でかしたぁ!!!」
「!」
声のでかさに思わずびくりとしながらもワインを差し出した。
スキップをするんじゃないかといった勢いで私(ワイン)に飛びついてきた。
「どうぞ、お召し上がりください。」
将軍は千年伯爵を穴が開くほど見つめたあと、思わずつり上がる口元を抑えた
「お前の今後については考えておこう」
今日も、ネクロスはワインのおかげで平和です。
「余のワインセラーには触れるなよ。
それから、貴様がワインを余に寄越す時は献上品以外のもの限定だ。」
「あばばば!」
平和です。
最初のコメントを投稿しよう!