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その日、ちょうど6歳になった私と14歳の兄(秋ちゃん)は両親を失った。
ろくな引き取り手が現れなかったので、私と秋ちゃんはすぐに養護施設へと預けられたけれど、
元来内気で人見知りだった私にとって、見ず知らずの人達と衣食を共にする施設での生活は、申し訳くはあるけれど、正直苦痛だった。
秋ちゃんは、そんな私とは対照的に、施設の大人や他の子供達と驚くほど早く打ち解けることが出来ていた。
しかし、多分秋ちゃんは私が施設になかなか馴染めないでいたのを気に病んでいたらしく、
先生からの信頼・評判が厚く、中学でもトップに近い成績を保ち続けていたにもかかわらず、高校進学を諦め、
卒業後、施設の先生の知り合いが経営する近場の工場に就職した。
未だに秋ちゃんは否定するが、それがほとんど私のためであったことは想像に難くなかった。
10歳になった頃には、秋ちゃんが先生に頼み込んで、安いボロアパートを借り、秋ちゃんと私で二人暮らしを始めた。
どんなに床が軋もうと、扉のたてつけが悪かろうと、秋ちゃんが頑張って借りてくれてる部屋だと思うとそれらすべてが愛おしく思えた。
その頃から拙いが、家事をやりはじめた。小さなことだけれど、私が秋ちゃんに唯一してあげられることだったので、
たとえ秋ちゃんにしなくていいと言われようと、止めようとはしなかった。
それと同時期だっただろうか、
通っていた小学校で私は「幽霊女」と呼ばれ始めていた。
元々そんなに愛想も良くなく口数も少ない上に、色白(むしろ青白いと表現したほうが適切かもしれない)肌と、
肉付きの良くない貧弱な体、
真っ黒で長いストレートの髪、
という条件は、小学四年生に幽霊を連想させるには、余りに十分すぎた。
3分以上会話すると、身内に不幸が降り懸かるなどといった、ありもしない噂が実しやかに囁かれていたし、
誰がどうやって手に入れた情報なのか未だに謎だが、
私の誕生日に起きた両親の事故の件がその噂に真実味をあたえていたのかもしれない。
そして、言うまでもなく、私は学校において完全に孤立した。
いじめ、とかではなかったと思うが、
少なくとも友達などと呼べる人物はたったの一人もいなかった。
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