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-最後の会話-
「ねぇ…聞いたことある?UFOの本当の正体。」
ん?UFOの正体?宇宙人の船とか、どっか国の秘密兵器だとか?
「んー…それは定説だよね。そうじゃなくて、実は…って話。」
えー…知らないな、そんな話。
「実はね…未来人のタイムマシーンなの。」
えっ?そうだったのか?
「うん、UFOってさ、大抵大きな歴史的出来事が起こる時に多く目撃されてるらしいの。つまり未来人が過去の歴史的出来事を見物しに来てるって事。」
へぇぇぇ。そうなのか。でも、確かにその説は的を得てるな。
「…ってこの間TVで言ってた。あはは。」
受け売りかよっ。自分で気付いたのなら尊敬できたのにな。
「でも…さ。本当にそうだったとして。もしも、偶然UFOに出会って、未来に行けるとしたら…。見てみたくない?」
ん…何を?
「未来。」
ん…。見たい気もするが…でも、どっちでもいいかな。そんな事より自分がどう生きて行くかの方が大事だ。
「あははっ。そうだよね。ずーっと先の事なんかより今の自分の方が大事!確かにね!」
―そう笑い飛ばした彼女の笑顔は夕陽に染まりどこか寂しげに見えた。
中学三年、高校受験を控えたある春の下校時の話。
それが彼女(ハル)との最後の会話だった。
ハルはその日以来登校しなくなり、数日後、朝のHRで担任がハルの転校をクラスに伝えた。
急な転校という事で、その日ハルは登校もせずに引っ越ししたらしい。
校内でも、身の回りの友人としても、一番の親友だと思っていた自分に一言も告げず。
ハルは自分の前から姿を消し、その後も連絡をよこす事はなかった。―
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