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-おかえりなさい-
「あいつ今頃何やってるかな…。」
自宅のベランダで星を見ながら煙草の煙をゆっくりと吐く。
ヨウスケはここ最近、過去を振り返る事が増えた気がしていた。
その後、ヨウスケはそこそこの高校に入り、そこそこの大学に入り、そこそこの会社で働いていた。
今の自分に不満は無いが、満足もしていなかった。
そこそこの給料をもらい、交際する異性とも巡り合い、順調と言えば順調かもしれない。
社会に出てから3年が経ち、そろそろ次のステップも考えていた。
周囲にも心配になったり、頼もしかったりする後輩連中もいれば、優しく、時に厳しく指導してくれる上司や先輩もいる。
『そろそろ昇進じゃない?』
何て話が冗談とも本気とも言い難い立場にもある。
先日中学の同窓会があった。
同い年ですでに役職についている人間もいれば、フリーターで遊びほうけてるなんて人間もいた。
結婚して子供がいる人間もいれば、まだ付き合った事もない、何て嘆いている人間もいた。
何事もそこそこに生きてきた自分自身が、酷く中途半端に思えた。
「…このままでいいのだろうか。」
正直、一番幸せな生き方をしていると思っている。間違いではない。
大きな壁も山も谷もない。人生楽ありゃ苦もある。何て歌があるが、苦はなく楽ばかり。
他者から見たら最高な生き方を歩んでいる。
ただ…このように過去を振り返り、たまにハルの事を思い出すと胸に詰まる思いがあった
。
―実はハルは転校何かじゃなく…実は未来へ行ってしまったのではないか…―
最後の会話は、実は彼女の中ですでにそれが決まっていて…止めてくれたり、一緒に未来へ行ってくれたり、もしくは別の何かに巻き込まれていて、自分に助けを求めていたのではないだろうか…。
10年以上経った今もあの時のハルの笑顔が忘れられないままだった。
もし…仮にそうだとして、ハルと一緒に未来に行っていたら、自分はどうなっていたのだろうか。
ハルを止めて、ずっと親友でいれていたら、そこそこの人生を送る自分を変えてくれていただろうか。
ハルと一緒に何かに巻き込まれていたなら…。
「何考えてんだ…。こんな歳になってまで。」
ヨウスケは煙草の火を消して、意味のない回想も消す事にした。
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