第一章:邂逅

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カタカタ...カタカタカタ......カタッ ノートパソコンのキーを叩く音が、まるでピアノの鍵盤を弾くように規則的だが気に障らない音を奏でていた。 現在PM6:13 いいかんじに一段落着いたので、私は業務を終了とすることにした。 『ペット葬儀物代行卸問屋』 アムーバブログにて行っているアフェリエイト、これが副業の正体である。 あまりライバル、というかこの手の同業者がいない為、それなりに月々の収入もあり、少しずつではあるがグラフは去年からほぼ右肩上がりを維持し続けている。 他の動物を飼い馴らし愛でるのは、お偉い人間様の特権なのだろうね。 そんなエゴに呆れながら、ブラウザを閉じた。 さて、何かやり忘れたことはっ…と。 あ、あるわ。 私はインターネットを再び立ち上げ、画面上部のURL欄にカーソルを合わせ、キーを打ち込んだ。 いつもいつも、ブクマ登録忘れちゃうんだよね。 カリカリというパソコンの処理音をBGMに、目に掛かった前髪を左手でかきあげる。 ページに移動出来たようだ。 エデュケーションツールコミュニティーサイト 通称EDC。 とあるネット中毒の元教師が設立し、いつの間にやら全国の私立高校で利用されるようになったという、ネット界における生ける伝説の一つである。 簡単に言えば、多機能なメーリングリストをホームページで利用出来るようにしたものなのだが、一つ頭飛び抜けて画期的なシステムが搭載されている。 それは、出席番号と名前をログイン画面で入力すると、自分が通う学校及びクラスが表示されるのだ。 登録もしていないのにこれは個人情報流出やプライバシーの侵害ではないのかと一部の嫉者達は騒ぎ立てたが、政府はこれを黙認し、翌年にはサーバー補助に回るなどと異例の措置をとった。 増加する学生によるいじめや非行そして自殺の防止政策が有力らしいが、真意は不明。 そしてその基礎データとシステムを開発した管理人である元教師は現在、行方知れずである。 前置きはさておき、そんないわくつきだらけのサイトにアクセスした私は、真偽が定かではない情報などどうでも良かった。 その時は、ただの暇潰しのつもりだったのだ。 躓いたのは石、転んだ先は奈落とも知らずに。
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