第二章:異変

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「これは、何…?」 雑音が消えた瞬間から、とてつもない不安が私を襲っていた。 形容しがたい程の憎悪と嫌悪と悪意が篭った、"殺しても構わない"という敵意が自分に向けられているのを肌で感じた。 それは、あろうことか目の前の玄関の扉の向こう側から。 砂嵐のような雑音がどこからともなく鳴る世界は、一般的に異常といえるだろう。 何故なら現実は常にそのような事が起こることのない世界だから。 異常な世界で起こる事象が現実化されるという現象は、目の当たりにすると無限の恐怖に感じた。 私は別段霊感がある訳ではなく、どこにでもいる善良な一般市民である。 心霊体験やラップ現象に立ち会ったり経験したことはなく、17年間普通に生きてきた。 なのに、この殺意を感じていることは、はからずも事実なのである。 ガンガンガン!! 不意にドアが外側から叩かれ、がちゃがちゃとドアノブが回される音が聞こえた。 びくっと反応した私は、その場から一歩退き、尚も叩かれるドアから距離をとった。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」 動機が激しくなり、私は立っていられなくなりその場に座り込む。 呼吸が乱れる程の恐怖に、押し潰されそうになっている。 「なんだよこれ…訳わかんねーよ…」 原因不明の対象から向けられる殺意と、それにより死ぬかもしれないという恐怖が、自分の内面を内側から食い破るような錯覚をおぼえる。 怖いという感情が強すぎて、発狂しそうな位だった。 幸いドアには二重の鍵がかけられているので、余程の事がない限り家には入り込まれないだろう。 それでも心許ないぐらい、私は怯えていた。 「…チェーンを…鎖、かけなきゃ……」 これだけやったら、部屋に戻り布団をかぶってすぐに寝よう。 この悪夢が醒めるまで、耐え抜こう。 這うようにして玄関のドアチェーンをかけたところで、不意に外から叩く行為が止んだ。 「いなくなった…?」 外を確認する為、私は身を屈めてドア穴を覗き込んだ。 闇が広がっている。外には誰もいなかった。 そんな甘い、ことはなかった。 「…ひ……ひぃっ……!?」
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